モルドバでは、毎年春にいくつかのお祭りが開催されています。
その一つに、「マルツィショール」というお祭りがあります。
そして、マルツィショールの由来ははっきりしておらず、モルドバにはマルツィショールにまつわる伝説がたくさん残されています。
本記事では、マルツィショールについてや、マルツィショールにまつわる2つの伝説を紹介します。
1マルツィショールとは?

マルツィショール(Mărțișor)とは、春の訪れを祝うモルドバのお祭りです。
毎年3月1日がマルツィショールの日とされていて、3月中はマルツィショールと呼ばれる赤と白の紐飾りを胸につける習慣があります。
このマルツィショールを着用すると、その年を健康に過ごすことができると信じられています。そのため、マルツィショールは自分で用意するのではなく、家族や友人にプレゼントするのが一般的になっています。
また、地域によっては、男性が想いを寄せる女性にマルツィショールをプレゼントする習慣もあります。
マルツィショールはモルドバだけではなく、お隣のルーマニア、ブルガリア、北マケドニアなどの東欧の国でも祝われています。
2マルツィショールにまつわる2つの伝説

マルツィショールの由来ははっきりとしておらず、いくつかの伝説が残されています。
ここでは、マルツィショールにまつわる2つの伝説を紹介します。
伝説1 冬に打ち勝った春の話
1つ目の伝説は、春と冬を擬人化したお話です。
3月1日、春はモルドバの森にたどり着きました。
そして、春は、とげのある植物が生い茂っている茂みの中に、美しいスノードロップ(松雪草)が咲いているのに気がつきました。
スノードロップは、一輪だけではありましたが、茂みに華やかさを与えていました。
しかし、枯れた大地を好む冬は、スノードロップのことをおもしろく思ってはいません。
そこで、冬はこのスノードロップの出現を見て、風と霜を呼び、スノードロップを凍らせてしまいました。
この様子を見ていた春は、すぐに手で雪を取り除いてスノードロップを助けました。
しかし、春はスノードロップの雪を取り除いた時に、とげのある茂みで指を負傷してしまいました。
この時に、春の血がさっとスノードロップに落ち、春のあたたかい血でスノードロップは生き返りました。
このように、春が冬に打ち勝ったことをイメージして、マルツィショールの紐飾りの色は、雪の白と、春の血の赤い糸で作られています。
伝説2 太陽を助けた勇敢な青年を称える話
太陽はいつも地上を照らしながら、地上の人たちと楽しく暮らすことに憧れを抱いていました。
そして、太陽はいつからか人間の男性に化けて、地上で人々と楽しく暮らすようになりました。
太陽が地上の人々と楽しく過ごしているのを妬んだ竜は、地上で暮らす太陽を誘拐し、竜の城の地下室に放り込みました。
太陽を失った地上の鳥は鳴き止み、子供たちは笑えなくなりました。しかし、誰も竜に立ち向かう勇気はありませんでした。
ある日、勇敢な青年が竜の城に行って、太陽を救うことを決意しました。そして、多くの民衆は彼に加わり、強大な竜を倒すための力を青年に与えました。
青年は、くる日もくる日も太陽が幽閉されている竜の城を探し続けました。しかし、必死に探しましたが、なかなか竜の城は見つからず、気がつけば夏、秋、冬の3つの季節が過ぎ去っていました。
そしてついに、青年は太陽が幽閉されている竜の城を見つけることに成功しました。しかし、竜も簡単には太陽を解放させず、青年と竜の戦いは何日も続きました。
激しい戦いの末、青年は竜を倒し、太陽を解放することに成功しました。太陽を取り戻した地上の自然は蘇り、人々は笑顔を取り戻しました。
しかし、その代償に、青年は大きな傷を負ってしまいます。そして、青年の傷口から流れ出た温かい血が、真っ白な雪の上に落ちました。
最後の血の一滴が雪の上に滴り落ちた時、青年は自分の人生が太陽を救うという崇高な目的を果たせたことに満足して、息を引き取りました。
そして、やがて春になり、雪が解けると、春の使者であるスノードロップと呼ばれる白い花が芽吹きました。
それ以来、勇敢な青年の功績を称えるために、白と赤の2本の房を編むのが慣わしとなりました。
赤は美しいものすべてへの愛を表し、勇敢な若者の血の象徴であり続けています。白は純潔、健康、そして春に最初に咲く花であるスノードロップを象徴しています。
33月1日はマルツィショールの日

マルツィショールは、春の訪れを祝うモルドバの伝統的なお祭りです。
3月1日がマルツィショールの日とされていて、3月中はマルツィショールという赤と白の飾りを胸につけるのが習慣になっています。
3月にモルドバを訪問する機会があれば、ぜひマルツィショールを楽しんでみてください。