モルドバはソビエト連邦の崩壊によって、1991年に独立した新しい国です。
首都のキシナウを歩いてみても、ヨーロッパ風の建築があったり、旧ソ連諸国に見られる無機質な建物も見られます。
西部にある沿ドニエストル共和国の地域に行ってみると、同じ国とは思えないような旧ソ連風の街並みが広がっています。
なぜ、モルドバはこれほどまでに異なる文化が混じり合っているのでしょうか。
その答えは、他国からの支配と独立を繰り返した、モルドバの複雑な歴史の中に隠されていました。
本記事では、そんなモルドバの激動の歴史を振り返ろうと思います。
1モルドバ激動の歴史

モルドバの歴史を5つのセッションに分けて紹介します。
古代 〜ダキア人の王国が栄える〜
モルドバの歴史は古く、現在のモルドバ(モルダビア地域)に古代よりダキア人が王国を作っていました。
長らくダキア人の王国が栄えていましたが、100年頃にローマ帝国の侵攻を受けて滅ぼされてしまいます。
モルドバはその後長らくローマ帝国に属することになります。
中世から近世 〜オスマン帝国とロシアの支配下に…〜
1359年にモルダヴィア公国が建国されますが、わずか60年後の1420年にスマン帝国の支配を受けるようになります。
この時代のオスマン帝国は、バルカン半島諸国を完全な支配下に置くことが多かったですが、モルドヴィア公国の場合は貢納金の納付を命じられるなど、部分的な支配にとどまっていました。
18世紀になるとオスマン帝国が徐々に衰退し始めます。そして露土戦争(ロシア帝国とオスマン帝国の戦争)の後、モルドヴィア地域はベッサラビアとしてロシア帝国に併合されます。
1853年のクリミア戦争で今度はロシア帝国がオスマン帝国に敗れたことで、ロシア帝国の保護国から脱し、再びオスマン帝国の部分支配の下で独立しました。
第一次世界大戦 〜隣国のルーマニア王国へ併合〜
第一次世界大戦中の1918年、モルダヴィア民主共和国として独立を果たします。
しかし、ようやく独立したにも関わらず、モルダヴィア民主共和国の国民の多くがルーマニア人だったこともあり、隣国のルーマニアとの併合を望む声が高まっていました。
また、独立宣言から2週間後に隣国ルーマニア王国が首都キシナウに侵攻してきました。
これらの出来事が影響し、独立宣言からわずか2ヶ月程度でモルダヴィア民主共和国はベッサラビアに改名し、ルーマニア王国の一部になりました。
第二次世界大戦 〜ソ連の構成国家となる〜
第二次世界大戦の1940年にソ連がベッサラビアを占領し、モルドヴィア・ソビエト社会主義共和国とされソ連の構成国家になりました。
その後50年にもわたり、モルドバはソ連の支配を受けることとなりました。
現代 〜ソビエト崩壊から独立へ〜
1991年のソビエト連邦崩壊により、現在のモルドバ共和国として独立を果たしました。
独立したモルドバですが、いくつかの問題はまだ抱えたままです。
その一つは沿ドニエストル共和国問題です。
沿ドニエストル共和国はモルドバの一部でありながら、モルドバ政府の実行統治が及んでいません。1992年にはモルドバと沿ドニエストル共和国の間に独立戦争も勃発しています。今は落ち着いていますが、今後また情勢不安になる可能性も十分考えられます。
モルドバは今なお「ヨーロッパ最貧国」と言われており、GDPも停滞しています。
しかし観光客も年々増加してきており、少しづつではありますが国の振興が進みつつあります。
2モルドバの歴史を深く知るにはここへ行こう!

モルドバの歴史を深く知るには次の2カ所に行くことをおすすめします。
文字や映像だけでなく、実際に見たり、空気を感じたりすることは歴史を学ぶ上で非常に重要です。
どちらもキシナウから簡単に行くことができるので、ぜひ行ってみてください。
モルドバ国立歴史博物館
古代から現代に至るまでの歴史資料が多数展示されてます。
他国に翻弄されてきた、モルドバの激動の歴史を多数の展示品から知ることができます。
展示品を実際に見ながら学ぶと、より理解が深まります。
沿ドニエストル共和国(トランスニストリア)
沿ドニエストル共和国は支配と独立を繰り返したモルドバの歴史を象徴する場所の一つでもあります。
中心都市であるティラスポリまでは、キシナウから車で2時間で行くことができます。
沿ドニエストル共和国では独自の通貨があったり、ロシア語が話されたりしています。
モルドバでありながら違う国に来た印象を受けると同時に、モルドバは複雑な国なんだなという印象も受けることができます。
3まとめ

モルドバは周辺諸国からの占領と独立を繰り返し、複雑な歴史を辿ってきました。
そのため、沿ドニエストル問題など、現在でも情勢に関する問題を抱えています。
しかし、そんな複雑な歴史を辿ってきたからこそ、現在は様々な文化が混じり合った魅力的な国になっています。
モルドバを訪れた際は、ぜひその多様な文化を楽しんでください。